代表インタビュー

相馬を守る影の立役者代表取締役 松山昭広

※この記事は2023年「相馬のかっこいいおとな・お仕事プロジェクト(東京大学相馬プロジェクト)」に掲載されたものです。

意外と身近な林業のお仕事

松山昭広さんは、お父さんが社長を務める松山林業の専務取締役として働いています。「林業」ってどんな仕事か、みなさん知っていますか?季節によって必要な作業が異なりますが、林業の主な仕事は、植栽(木を植える)、下草刈り(木の根元の草を刈る)、間伐(木の数を調整する)、そして伐採(材木にするために木を切る)です。

松山さんはこれまで様々な仕事を引き受けてきました。震災後、松川浦に防災のための黒松を植えることになった際、大量の土が必要となりました。その土を掘り出す「土取り場」の整備のために、木の伐採を行ったのが松山林業でした。
復興道路を作るために、山を切り開く仕事を依頼されたこともあります。他にも、道路の脇の木の枝の伐採をして安全な道路を維持するなど、みなさんの身近なところにも実はたくさんの松山さんのお仕事が隠れています。

そんなにかっこいい理由はない

もともと松山さんのおじいさんは、個人的に山で木を切って生活していました。それをお父さんが継いで、松山林業という会社として立ち上げました。
幼い頃からお父さんが山に入って木を切っているのを見ていた松山さん。子どもの頃は、林業に対して危険できついイメージを持っていたので、お父さんのお仕事を継ぎたいとは思っていなかったそうです。松山さんは仙台の専門学校で建築、測量を学び、卒業後は相馬に戻って、10年以上建設会社で働いていました。しかし、ふと林業に戻ろうと思い立ち、お父さんの会社に転職することを決めました。
お仕事のやりがいについて尋ねたときに、「やってよかったと思う」と断言された松山さん。林業を仕事にすると決めたかっこいい理由はない、と笑いつつも、お仕事への誇りが伝わってきました。

林業って結構いい仕事

子どもの頃はきつそうな林業の仕事をやりたいとは思っていなかった松山さん。でも、大人になって実際に林業の仕事をやってみると、環境や木についての色々な知識が増えてきました。そして、森林や山の大切さが身にしみて分かるようになったそうです。
また、山の中で仕事をしてお弁当を食べることがすごく気持ちがよかったり、自分が植えて5~6年たって大きくなった木を見て嬉しくなったりしたとのこと。そして、そうやって心を込めて育てた原木を市場に持っていって、競りで高い値段がついて売れるのも嬉しい。「建設現場で働いていたときよりも心が広くなったかも」と笑いながら話してくれました。

山から相馬を守る

相馬といえば美しい海!でも海や川をきれいに保っていくためには、実はまず山をきれいにすることが必要なんです。木々を手入れする林業をさぼってしまうと、山全体が荒廃してしまいます。木がうまく育たなくなり、自然や環境を支えていた山の様々な性能が失われてしまいます。また、間伐をしないと林内に光が入ってこなくなり、木の根元に生えている下草や植物が枯れてしまいます。
すると、下草が支えていた土の栄養分が失われて、もろくなってしまい、土砂崩れが起こりやすくなってしまいます。今、相馬で会社として林業を行っているのは松山さんだけです。
担い手不足などいろんな問題もあるけれど、健全な森林を作っていきたいし、保持していきたい、そしてそれが豊かな相馬の海にもつながっていくはずだ、と松山さんは考えます。林業の仕事は、山から相馬の海を支える、縁の下の力持ちだと感じました。

子どもたちへのメッセージ

木材には温もりがあります。
木の温もりが感じられる家が最近流行ってますが、どうやってこのような木が作られたんだろう?って考えてみると、林業への興味が出てくると思います。
そしてまず、相馬の自然とよく触れ合ってください。農業も漁業も林業もあっての相馬という姿を残していきたいですね。

実は身近にあった林業のお仕事

よく使う道路や松川浦の黒松林など、身近に林業のお仕事があることを初めて知りました!相馬の街の見方がさらに深まった気がします。松山さんは終始穏やかにお話をされていましたが、林業の役割をお話になる声には熱がこもっていました。相馬の山や海をしっかりと支えようとする松山さんの優しさに惹かれました。

担当学生 F.Mさん